胸にひそめた、私的もののあはれ等。
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(プロット)

 瞬く間に肥大化した領国は遂に五ヵ国に跨り、その経略に追われる日々となった龍造寺家の家宰、和泉守長信
街道を一望できる高所に聳え立つ峻厳の山城、多久梶峰城に籠り、一人思案を重ねる。果てはどこまで行くのか、我が兄上、隆信殿の勢力。とにかく兄上は、即断即決である。敵方がまさかと思う間に、軍勢を動かす。目下は須古城に遊ばして、英気を養われて居る様子。素行がお宜しくないと聞き及ぶが、如何であろう。神経質な所のある兄上ゆえ、心底は油断されて居られまい。抜け目ない大友宗麟も、隙有らば肥前の国人共と書簡を往復させている。

 此処、多久の地は今や一大物流拠点となった。領国各地から様々な物資が集まってくる。来たるべき戦に備え、常に軍備を補強せねばならない。特に力を入れるべきは、種子島。もはや戦の趨勢は火力で決まる事、歴然としている。どれだけ鉄砲の数を揃えられるかで、我々の命運が決まる。軍需物資の調達については、すでに海外と交易する道を探るべく、家臣を支那へ派遣した所だ。

 長信は深呼吸をして、城を包む森の新緑に目を遣った。肌を撫でる風は寒いが、そろそろ春が芽吹いている。さぁ、今年は良い一年になるはずだ。長信はゆっくり大きく背伸びをし、両手で大きく円を描くようにして肩の疲れを解した。軍事の事はまた別の機に・・、と思ったがやはり気に掛り、思念が頭から離れない。

 槍の製造などについては、悉く塗金を施し、我が軍の威厳を高める効果を図った。この黄金に輝く槍隊の大軍が前へ進めば、必ず敵の気持ちは委縮するであろう。その眩さはさながら、日足を見るが如し。その創意工夫は、九州制覇に懸ける、長信渾身の思いであった。兄上の更なる飛躍を、儂は後方から力強く支えなければ。

 長信は、今この一時の平穏は、すぐに破れるものと経験的に知覚している。いつ、須古の兄上から陣触れの御達しが来るかもしれぬ。いつでも迅速に大量の軍事物資を動かせるようにしておかねばならない。

 と、思案に暮れる間に、嫡男の家久が廊下をばたばたと踏みならし、慌ただしく駆け寄って来る。

「父上!!取り急ぎの知らせ是有り!」

「何事じゃ。」

「薩摩、島津の手勢肥後より海を渡り、島原の南へ上陸した由!」


「何と・・・・。」



 泰平に思われた肥前。その春暁は、この一報で見事に蹂躙された。
長信は、無念を覚えた。いざ日頃の備えが活きる事態に在りながら、余りにも早く勃興した動乱を疎ましく思った。

 我々には、休まる日々は、無いのだ。





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【2013/06/27 01:35】 | 歴史のこと
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